税務調査に大きく関係するのは過少申告加算税と重加算税

本来、納めるべき税金には、主に延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税、重加算税等があります。それぞれの中身を知ることで、事前準備に役立てましょう。

延滞税・・・法定納期限内に税を納付しなかった部分に関してかかる税金です。

過少申告加算税・・・税務調査が行われ、修正申告する際にかかる税金です。原則は10%ですが、追加税額のうち期限内確定申告額、または50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%になります。事前準備する際など、概算で過少申告加算税を計算する際には、15%で計算しておくとよいでしょう。

無申告加算税・・・期限内に申告を提出しなかったり、申告していない場合に15%加算されます。

不納付加算税・・給与や報酬の源泉所得税を納期限内に納付しなかった場合に10%加算されます。

重加算税・・・隠ぺい仮そうがある場合には、原則35%もの加算税を支払わなければいけません。

隠ぺいが認められると、青色申告の取り消し、役員給与の損金不算入などのペナルティがあります。

代表的なのは、二重帳簿を作成しているケースです。たとえば、平日はAの帳簿を、休日はBの帳簿をつけているような場合、申告する際にはAとBを集計しなければなりません。しかし、Bの帳簿を申告し忘れてしまうと、わざとではなくとも重加算税がかかってきます。

その他、売上の一部が個人の口座に振り込まれ、集計が漏れるパターンもよくあり、この場合も重加算税を支払わなければなりません。

つまり、「隠ぺい仮そう」は故意かどうかにかかわらず、形式で判断されることもあるわけです。売上がいつもと違う口座に振り込まれていないか、集計モレがないかについては、十分に注意して事前準備する必要があります。

加算税を最少にする修正申告

加算税の種類を見てみるとわかるとおり、加算税が大きな負担になるかどうかは、重加算税が課されるかどうかです。

重加算税を避けるためのポイントは、自主申告することです。

通常、税務調査は「内部調査⇒事前通知⇒臨場調査⇒反面調査・銀行調査⇒端緒把握⇒非違事項指摘⇒修正申告書の勧奨等」と進んでいきますが、このうち実務上では「臨場調査」の前まで自主申告とされています。

平成28年12月期限の申告まで

平成28年12月期限の申告分までは、修正申告すると過少申告加算税は課されません。

ここでポイントとなるのは、過少申告加算税が課されないと、重加算税も課されないことです。重加算税は、過少申告加算税に賦課されるものだからです。

平成29年1月以降期限の申告から

平成29年1月以降の国税については、扱いが変わりました。調査通知以後、修正申告する場合は、原則5%、一定額を超えた場合には10%加算されることになったことです。例外として15%課されることもあります。

過少申告加算税を支払わなければならないということは、隠ぺい仮そうがあると重加算税が課される可能性があるということですから、頭に入れて対策をする必要があります。

もう1点、大きな改正があります。期限後申告等があった日以前5年以内に同じ税目に無申告加算税または重加算税を支払っていた場合、もう一度重加算税が課されるときの率が上がったことです。

たとえば重加算税は通常35%ですが、期限後申告等があって、5年以内に同じ税目で重加算税を支払ったことがあれば、45%に上がってしまいます。延滞税も含めると50%近くになってしまうので、何も対策しないとかなり大きな痛手となるのは間違いありません。

自主申告でどれくらい納税額が下がるのか?

あってはならないことですが、もし税務調査で黒と判断された場合には、原則として調査期間が7年分になってしまいます。もちろん、原則刊10%、または15%かかる過少申告加算税もかかりますし、過少申告加算税に代えて重加算税が課せられる可能性もあります。

通常、過少申告加算税であれば、たとえば5年前の申告に関して延滞税も4%ですが、重加算税がかかると延滞時の除斥期間がなくなります。7年前の分の延滞税は、単純に7年分の延滞税が、6年前の分に関しては6年分の延滞税が課せられるわけです。

ところが、自主申告した場合、対象期聞が5年になり、過少申告加算税も重加算税もなくなることが多いです。延滞税も1年分です。

これを同じような項目、同じ否認額で試算すると、自己申告せずに7年間、重加算税などが課せられた場合、総額で約1600万円以上にものぼります。

ところが、自己申告すると5年分と延滞税のみになり、1000万円弱です。差額はなんと600万円。40%近く抑えることができます。

自主申告が約2分の1になる、逆にいうと自己申告しなかったら約2倍になるというのは、たいていの場合において当てはまります。税務申告前にシミュレーションすると、修正申告しない場合にだいたい2倍弱になるはずです。

会社として存続の危機とも言うべき金額です。

指摘されるような事柄があるなら、必ず自主的に修正申告をするようにしましょう。