業界事情

 バー・スナック等の事業所数・従業者数・市場規模

全国事業所数は14万程で, 年々緩やかの減少傾向である。従業者数は50万程で,こちらも事業所数に比例して減少傾向となっている。市場規模は2.5兆円程である。

飲酒運転の罰則強化の法改正

平成13年に道路交通法改正での罰則強化がされたが, 未だになくならない飲酒運転や飲酒運転を逃れようとする悪質な運転者(ひき逃げ)に対して,平成19年には罰則強化のほか, 道路交通法では罰則がなかった車両提供や酒類提供, 飲酒運転車両への同乗についても新たに罰則が設けられた。

さらに,酒類提供者についても,罰則の内容は、同乗者の場合と同じで, 飲酒運転に対して3年以下の懲役, 又は50万円以下の罰金, 運転者は危険運転致死傷罪になると最長20年の懲役が科せられる。

経営改善のポイント

女性が1人でも安心して入れる明るい店作り

深夜でも女性1人で入れる店が人気である。都心のホテル内のバーは, 落ち着いた雰囲気に加え, 夜景等の眺望も見所である。

また,女性の好むワインを専門にしたワインバーでは厳選されたワインとそれに合った料理やチーズを充実させ,モダンな雰囲気,明朗会計で女性1 人あるいは女性グループが楽しめる憩いの場を提供している。

深夜でも女性も酒を飲む機会が増えているが,女性1 人や女性グループでの入店は抵抗が強い。

特に女性は,「初めてでも入りやすいお店」,「低料金」,「明朗会計」,「美味しい料理」等のニーズが強い。

バー・スナックの店舗の多くは,1 枚ドアで閉ざされ, 窓ガラスもなく閉鎖的であるが,女性客を増やすには明るい開放的な店作りが不可欠である。

料理もオリジナルの家庭料理・料金をメニューに明確に表示することが肝要である。

親しみやすい接客

バー・スナックは,夜の社交場として支持されてきたが,カラオケボックスとの競合,余暇の活用の多様化,若者の「会社重視」から「自分重視」への価値観の変化等により,バー・スナック離れが始まった。

さらに長らく不況により,サラリーマンや自営業者の財布のヒモが固くなり,水割りと乾きのつまみによる料金が低料金で料理も豊富な居酒屋に比べて高いと感じるようになったことが, 足を遠のかせるのに拍車をかけた。

バー・スナックはサービス産業であり, 人的サービスが収益力を向上させるポイントである。

そのためには, 店主や従業員が家庭的な温かい,顧客に好かれる気持ちの良い接客で,顧客に合った話しができなければならない。

顧客の顔と名前をすぐに覚えておき, 次に来た時にその顧客と分かることも大事である。

法令の遵守

店舗設備,営業形態,営業時間等により分類され,単に飲食を提供するだけならば飲食店営業であるが, 接待をすれば風俗営業になる。

その場合,営業時間は午前0時までであり,人・構造設備・場所に関する許可基準がある。

午前0時以後に酒類を提供して営業すると深夜酒類提供店となる。

営業方法により監督官庁の許可が必要になる。

また,改正道路交通法を遵守する店であることをPRして, 運転者に酒を提供しないことを徹底することも重要である。

税務のポイン卜

売上に計上すべき金額

バー・スナックの売上品目には,お通し,ボトル代,つまみ代等の他,店によってはタイムチャージ,サービス料といった料金がある。

いずれにせよ,税務上は客から受領した総額で売上計上する。

ただし,タバコ代等を実費で精算している場合には,立替金の取崩しとするか,その都度,客から実費を払ってもらう等して,帳簿に記載しないことも考えられる。

また,カラオケ代についても,原則として,総額を売上計上するがレンタルのカラオケ機械に客が直接料金を投入し,そのお金を業者と折半するといった契約を結んでいる場合は,業者から受け取った店の取り分を売上計上する。

従業員等に対する売上

バー・スナックの場合,接客中の飲食は,通常,客の伝票に付いているので,別途売上計上する必要はない。

しかし, 客の伝票に付けることなく従業員等が飲み食いした場合には, 食事代を徴収し,雑収入に計上する。

食事代を徴収しない場合は,残業や宿直等,通常の勤務時間外の勤務時に支給する食事を除き,経済的利益の供与として食事代を給与等に加算しなければならないので注意が必要である(所基通36-23,36-24)。

ただし,徴収する金額が,調理して支給する食事の場合は,材料等に要する直接費の額に相当する金額,購入して支給する食事の場合は,購入価額に相当する金額をもとに,その金額の50% 以上であり,かつ,それらの金額と実際に徴収している食事代との差額が日当たり3,500円以下であれば,その者に対する経済的利益の供与はないものとされる(所基通36-38, 36-38- 2 )。

給料・報酬等に対する源泉所得税の徴収

給料・賞与に対する源泉所得税は,その勤務形態及び支給額により,税額表(所法別表2 ~ 4)に当てはめて徴収するが,昼間他で働きながら夜も働いている場合,従たる支払者は乙欄で徴収しなければならない。

確認せずに甲欄で徴収していると,源泉徴収義務違反となるので注意が必要である。

また, ホステスについては,支払額から1日につき5,000円を控除した残額に対して10% を源泉徴収し, 非居住者に対しては, 支払額の20% を源泉徴収する(所法185, 186,195, 204, 212, 213)。

消費税の取扱い

消費税の事業区分は第四種に該当する。この業種は特に原価率が低く,経費全体に占める人件費の割合が高いので,課税売上高が5,000万円以下の事業者は,通常,簡易課税を選択した方が有利である。

ただし,開業時や店舗の改装時には課税仕入れが膨らむので,原則課税と簡易課税を計画的に使い分けることが節税につながる。