お客さまより、「役員等の経営者が社会保険に加入しなくても良い場合はあるのですか?」といった社会保険に関するご質問をよく受けます。法人は資本金や売上等のの規模や業種にかかわらず全ての事業所について、社会保険加入が義務付けられています。そのため、経営者一人であっても社会保険に加入しなければなりません。また、個人事業主であっても、常時従業員5人以上雇用している場合は、一定の事業(飲食・士業等)を除き、社会保険加入が義務付けられています。
法人は社会保険の加入が義務付けられていますが、役員の全てが社会保険に加入しなければならないというわけではありません。非常勤役員については加入義務はありません。
とはいえ、加入する義務が免除されているだけで、加入しないことが原則というわけではないことに注意が必要です。非常勤役員の勤務の実態によっては加入しなくても構わないといったことになります。役員は従業員と異なり委任契約に基づくため、通常、勤務労働時間という考え方がなく、その実態についての判断基準は、一般的に経営にどの程度関与しているか等の総合的に判断することになります。
しかし、非常勤役員について一般的定義がないため、迷うことが多いでしょう。日本年金機構より具体的に下記のような照会がありますので判断の基準とすることが良いでしょう。
質問:適用事業所において使用され、労務の対償として報酬を受けている役員は常勤、非常勤を問わずにすべて被保険者として扱うのか。
回答:労務の対償として報酬を受けている法人の代表者又は役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断されたい。
上記のQ&Aの中の報酬の対価についての判断基準についても下記のような照会があります。
1.当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか
2.当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか
3.当該法人の役員会等に出席しているかどうか
4.当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか
5.当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか
6.当該法人等より支払いを受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実費弁償程度の水準にとどまっていないかどうか
なお、非常勤役員は他の役員と同様に原則として労災保険・雇用保険ともに保険対象外ですが、実質的に労働者性がある場合については労働保険の対象となる場合がありあります。例外的に労働保険の対象となる場合としての判断基準については下記のケ-スが考えられます。
(労災保険)
1.役員業務の他に、他の労働者と変わらない業務に従事し役員報酬とは別に労働の対価としての賃金が発生している場合
2.名目的な役員で実態は他の労働者と変わらず指揮命令を受け、業務に従事している場合
(雇用保険)
・役員報酬と賃金を比較して賃金の方が多い場合等
※実質的に非常勤役員に該当するかについての判定は難易度が高いので、ご自身のみで判断せずに、社会保険労務士へ相談することをお勧めします。もちろん、弊所よりも業務提携しております社会保険労務士をご紹介できますのでご気軽にご相談ください。