繁忙期の体調を管理「免疫力を高める生活習慣」

監修者岡田昌子 内科医・マオクリニック院長

目ごとに冷え込みが増す今日との頃ですが、寒さの到来と共に会計事務所では、年末調整から確定申告まで続く繁忙期を迎えます。

忙しいとの時期は充分な休息が取れず、体調を崩してしまいがち。今年こそ万全の体調管理で繁忙期を乗り切りたい! そんな方のために今回は、体調管理のノウハウをと紹介いたします。オフィスや家庭での習慣を見直し、万全の体調をキープしましょう。

自律神経の安定が、免疫力向上のカギ!

私たちの身体には、病原薗などから身体を守ってくれる「免疫」という機能が備わっています。そして、免疫は「自律神経」がバランス良く働くことで、正常に機能します。

自律神経は、心身を活発にする「交感神経」と、心身を休める「副交感神経」が交互に働くことによって、私たちの健康を保っています。頑張って働いている時や活発に運動をしている時、面白いものを見て興奮している時には主に交感神経が働き、休息時や睡眠時などリラックスしている時には副交感神経が働きます。

しかし、ストレスの多い時期は必要以上の刺激によって交感神経が活発になり過ぎ、結果として副交感神経の働きが低下してしまいます。

副交感神経は身体の回復力を保つ働きも担っているため、副交感神経の働きが低下すると体調不良を引き起こしやすくなります。忙しい時期に限ってなぜか体調を崩してしまうのは、こうしたメカニズムが関係しているのです。

とは言え、忙しい時期にはそうそう休息も取れません。そこで、忙しい中でも免疫力を高めるのに有効な生活習慣をご紹介します。

就寝1時間前にはスマホをOFF !

まずは、体調管理の基本「睡眠」から。疲れているのに寝つきが‘悪い、そういう方は、寝る直前までテレビを見ていたり、スマホを触っていたりしませんか?

テレビやスマホなどの電子機器のディスプレイが発するブルーライ卜は、可視光線の中では最も波長が短く、強いエネルギーを持っています。そのため、強い光の刺激によって、なかなか交感神経から副交感神経に切り替えることができなくなってしまうのです。就寝前には、リラックスできる副交感神経優位の状態になっていることが理想的。仕事を終えたら、スマホの使用は最小限を心掛け、極力ブルーライトの刺激を避けるようにしましょう。やや暗めの間接照明などを利用するのも入眠に効果的です。

遅い時間の電話も、交感神経か高まり眠りを妨げる一因になります。寝付きが悪い、眠りが浅いと感じる方は、就寝前の“スマホ断ち” で改善されるかもしれません。

疲れた時こそしっかり入浴!ぐっすり眠れる入浴法

帰宅時聞が遅くなると、ついつい入浴も簡単に済ませがちです。しかし、本当は疲れている時こそ、入浴が大切なのです。

睡眠に入るためには、体温の低下が必要です。入浴することによって血行が良くなり一時的に体温が上昇しますが、入浴後は血管が広がるため、熱が放散されやすくなります。つまり、入浴によって体温を上昇させることで、逆にスムーズに体温を下げられるようになるのです。

40℃程度のお湯に、最低でも10分は浸かることで体温が上昇します。38℃以下の温めのお湯は長く浸からないと体温が上がらない上、この季節は浸かっている聞にお湯の温度が下がってしまいます。

忙しくて疲れている時こそ、上手に入浴して身体を暖め、良質な睡眠につなげましょう。

オフィスで実践!寒暖差の解消

冬場のオフィスでは、暖気は天井付近にたまりがちな上、入口付近から冷気が入り込むため、どうしても室内に寒暖差が生まれます。

寒がる人に合わせ、暖房の温度を上げると湿度か下がり、風邪のウィルスが繁殖しやすい環境になってしまいます。そこで心掛けたいのが寒暖差の解消。オフィスにいる方全員に快適な環境を作ることで、モチベーションのアップにもつながります。

プラスαで、オフィスを快適に!

ましょう。オフィスを快適にするにあたって、まず活用したいのがパーテーションです。冷気の侵入口となるオフィスの入口に、目隠しのようにパーテーションを置きましょう。注意したいのが、必ず床から直に立ち上がるタイプのものを使用すること。冷気は床面近くを流れて入り込むので、脚によって床面との聞に隙聞ができるものだと効果が半減してしまいます。

パーテーションでドアの開閉によって入ってくる冷たい空気を防ぐことで、暖房効率を上げることができます。

また、エアコンの暖気は天井近くにたまります。部屋中に行き渡らせるためには、エアサーキュレーターを使用すると効果的です。使い方は簡単。エアコンの下にエアサーキュレーターを設置し、送風口を天井に向け、1時間に5分程度使用します。

こうして寒暖差を解消することで、オフィスが快適になるだけではなく、暖房費も節約できます。

さらに、個人でできる取り組みとしては、「足元」がポイントになります。ひざ掛け、レッグウォーマーなどで足首・足の付け根を温めると、全身の血液の巡りを促してくれます。血液リンパの流れの中継点である「首・手首・足首・足の付け根」などを冷やさないことが、体感温度を高め、体調をキープすることにつながります。

きちんと栄養補給!食事のポイント

忙しい時期には、ついつい手軽なコンビニ弁当やインスタン卜食品で食事を済ませてしまう方が多いのでは?ある程度は仕方のないことですが、それが続くとビタミンや亜鉛などの栄養素が不足し、結果的に免疫力の低下を招いてしまいます。

また、免疫力を高めるには基礎代謝(生命維持のために安静にしているだけでも身体が消費するエネルギー量)の向上が有効と言われていますが、最近の研究では、基礎代謝に占める割合は、筋肉の活動よりも、肝臓、腎臓などの内臓の活動の方が大きいことがわかってきました。

つまり、内臓を健康に保つことが免疫力を高め、そのためには食生活が大きなポイントになります。

忙しい中でも気をつけられることを紹介しますので、ぜひ意識してみてください。

毎食タンパク質をきちんと摂る

コンビニのサンドウイッチや弁当類では、炭水化物や脂質は摂れますが、タンパク質は意外に不足しがちです。ゆで卵をプラスするなど、意識してタンパク質を摂ることで代謝が向上し、風邪などもひきにくくなります。

お菓子などの間食を摂り過きないように忙しい時期には脳がブドウ糖(脳の栄養素)を必要とするため、甘いものに手が伸びがちです。しかし、糖質の摂り過ぎは血糖値の乱高下を招き、長期的なエネルギーの補給には不向き。その上、お菓子でお腹が一杯になると食事に手か伸びず、栄養バランスを崩す元になります。忙しい時期は、間食をなるべく控えるようにしましょう。

野菜や海藻には、身体の調子を整えてくれるビタミンやミネラルが豊富に含まれています。食事の際は、新鮮な野菜や海草を積極的に摂るようになるべくサラダを添えるようにしましょう。

これさえ摂れば! という食品を摂ることよりも、できる範囲でバランスの良い食事を心掛けることが体調管理に有効です。ゆっくり食事を摂れない時こそ、野菜・タンパク質の摂取を心掛けましょう。

冬の脅威!インフルエンザを予防

冬場の最も怖い感染症の一つがインフル工ンザ。流行シーズンが12月~4月と、会計事務所の繁忙期にほぼ重なるのも怖いところです。

毎年、予防接種を受けている方も多いと思いますが、インフルエンザワクチンは感染を100%予防するものではありません。また、ワクチンはその年に流行すると思われるインフルエンザの「型」を予想して製造されるため、その予想が外れてしまう可能性もあります。

それでも、予想が的中した場合には70~90%の確率で感染を予防してくれますし、感染した場合にも重症化するのを防いでくれます。

一般的にワクチンの効果が現われるのは、接種後、約3~4週間経過した後と言われています。従って、最も忙しくなる確定申告期から逆算すると、予防接種は、まだ、繁忙期の疲労がたまっていない流行シーズン前の11月下旬頃までに行うのがベストです。

また、インフルエンザウイルスは、乾燥している環境で活発になる性質があります。湿度が50~60%になると活動が抑えられるため、加湿器などを使って適度な湿度を保つようにしましょう。室内全体の湿度調整が難しい時は、卓上や足元に小さな加湿器を置いて、自分の周りの湿度を上げるのも有効です。

忙しい時に特別なことをするのは難しいもの。だからこそ日頃の生活の中に、体調を整える習慣を根付かせておくことが大切です。生活習慣をちょっと見直し、長丁場の繁忙期を健康に乗り切ってください。